ロット管理とは。メリットや効率的な管理方法、システムの選び方を紹介
ロット管理と呼ばれる生産・在庫管理方法は、日本国内の製造業者や物流業者の間に広く浸透しています。「ものづくり大国」日本では生産管理の技術が日々発展しており、その一つとしてロット管理の方法も進化を遂げてきました。しかし、ただロット管理を導入しただけでは業務効率化や生産性向上に結びつきません。ロット管理を行う上での注意点や、効率化を図る方法について解説します。適切なロット管理に向けてお役立てください。
ロット管理とは
ロット管理とは、製品に「ロット番号」を付けて、製造から倉庫での保管、出荷、販売まで一元的に管理する方法のこと。同一条件下で一度に生産される製品群の最小単位をロットと呼び、ロットごとに番号を割り振って生産管理や在庫管理を行います。
ロットは、生産戦略に基づき任意に設定されるため数量に決まりはなく、生産スピードや製品多様化のために小ロット生産を行う場合もあれば、コストダウンや品質の均一化を重視して大ロット化する場合もあります。番号の設定方法も企業によって異なりますが、製造年月日や製造場所を記号化する方法が多く用いられているようです。ロット管理は生産の効率化やトレーサビリティ向上に適した管理システムとして、製造業や物流業で広く導入されています。
シリアル番号管理との違い
製品をグループごとに管理するロット管理に対し、製品を個別に管理する方法が「シリアル番号管理」です。個別に管理するため、リコールなどが発生した際、その製品の生産流通履歴をピンポイントで特定できます。しかし、製品一つひとつに番号を割り振り個別に管理するため、ロット管理と比較して手間やコストがかかります。
ロット管理の3つのメリット
適正なロット管理は生産・物流の効率化を実現し、コスト削減や品質の担保につながります。ロット管理における3つのメリットを解説します。
生産量を適切に管理できる
ロットは、生産コストや需要動向を基に設定するものであり、もし最小ロットを決めずに生産すると過剰生産が発生しやすくなります。過剰生産・過剰在庫が生じると、製品価値の低下やキャッシュフローの悪化を招きかねません。ロット管理で生産量をコントロールすることにより、過剰生産のリスクを軽減できます。また、ロットが適正な数量に設定されていれば、受注や生産計画、生産指示などの進捗管理が円滑化し、コスト削減につながります。
在庫管理が効率化する
基本的に、同一ロットの製品は製造日も製造ラインも共通しているため、ロット単位で在庫管理することにより品質管理が容易になります。ロット番号と製造年月日を紐づけすることで、入庫日の古いものから順に出荷する「先入れ先出し」も徹底できるでしょう。在庫管理にかかる人件費を削減できるだけでなく、廃棄処分リスクも軽減できます。
トレーサビリティが向上する
ロット管理は、トレーサビリティ向上に役立ちます。トレーサビリティとは、製品の生産から消費または廃棄までの道筋を追跡可能な状態にすること。ロット管理された製品にはロット番号が付いているため、万一、不良品やトラブルが発生した場合も、原因や責任の所在を追究しやすくなります。自社製品のみならず、原料や副資材についてもロット番号を記録しておくことで、よりレベルの高いトレーサビリティを実現できるでしょう。
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ロット管理をする上での注意点
ロット管理は生産管理の効率化に有効ですが、いくつかの注意点があります。
- 人的負担が発生する
- ロット管理に未対応の物流倉庫がある
- 受注ミスの可能性がある
自社が生産した製品だけでなく、仕入れ業者や加工業者、流通業者などが付けた原材料のロット番号が存在すると、管理が煩雑になります。複数のロット番号を正しく管理するためには、管理方法を統一し、社内の認識を揃えておくことが重要です。ロット番号の印字や貼付、確認作業にも人的負担が求められるため、工数の削減や効率的な人員配置を検討しなければなりません。
また、物流倉庫がロット管理に対応していない場合が考えられるため、事前の確認が必要です。さらに、受注ミスの可能性もゼロではありません。実際には「100個」のオーダーを「100ロット」で入力してしまうと余剰が生まれます。ロット管理の導入には、これらの課題に向けた対策が必要です。
ロット管理を効率的に行う方法
ロット管理を効率的に行う方法として、エクセルなどで管理表を作成する方法と、システムを活用する方法が考えられます。いずれにしても管理方法とルールを明確に定め、社内に周知することが大切です。
方法@:エクセルなどで管理表を作成する
ロット管理を機能させるツールのひとつに、管理表があります。小規模な企業であれば紙の管理表で事足りる場合もありますが、管理面やランニングコストを考えればエクセルなど表計算ソフトの活用が望ましいでしょう。
ただし、デバイス環境の整っていない外出先では、エクセルの管理表を確認・修正しづらいという課題があります。また、単一製品の管理には向いていますが、多種多様な製品を取り扱う企業の場合、シートやファイルが複雑になってしまうことや人的ミスが起こりやすいことが懸念される点です。求める情報にたどり着くまでに時間がかかったり、古い情報を閲覧してしまったりする可能性もあるのが、エクセルでの管理の課題といえます。
方法A:システムを活用し、自動化する
管理表の入力・運用をさらに効率化するには、システム導入による自動化がおすすめです。システム活用によりロット管理を自動化できれば、誤入力などの人的ミスを軽減させるとともに、管理にかかっていた労力の削減やリソースの再配置が可能です。リアルタイムな情報共有を促すことで、生産計画の正確性が向上し、過剰在庫や在庫切れを防ぎ、適正在庫の維持にも貢献するでしょう。
導入するシステムを選ぶ際のポイント
適正なロット管理に向けてシステムを導入するには、以下のような点に留意する必要があります。
- 業務内容との適合性
- 他システムとの連携の可否
- 現場での操作性
- サポート体制
- カスタマイズの柔軟性
- セキュリティー
ここからは、さまざまな業種のシステム導入に携わってきたキッセイコムテックから、システムを選ぶ際のポイントを紹介します。
システムを選ぶ際は、提供されている機能が自社の体制に合っているかを確認しましょう。ロット管理に特化したシステムもリリースされていますが、製造業の場合、在庫照会や棚卸支援など幅広い機能を網羅した生産管理システムの導入をおすすめします。また、他システムとの連携の可否も大切なポイントです。会計や販売などさまざまな業務との相互関係を強化することで、会社組織全体の最適化を促進できるでしょう。
ただし、どれほど機能が充実していても操作が複雑だと現場に負担がかかり、効率的な運用を妨げてしまいます。導入後、想定外の事態に直面する可能性を考慮し、サポート体制のチェックも欠かせません。
また、システム導入後に自社の事業戦略や生産体制が変わることもあるでしょう。体制変化に応じてシステムを柔軟にカスタマイズできるかどうかが、会社の舵取りを左右します。このようにさまざまなポイントが挙げられますが、その前提として高いセキュリティーレベルが保証されていなければなりません。
生産管理システム「ProAxis」を活用すれば、ロット管理もスムーズに
適正なロット管理を行い生産性を向上するには、現場志向の生産管理システム「ProAxis」の活用をおすすめします。個別受注生産や繰り返し生産、ファブレスなど、さまざまな生産形態に対応。幅広いデータをProAxis内マスタで一元管理することにより、コストを抑えた製造業務の統合運用が叶います。
現状の業務を見直しながら導入できる上、シンプルなマスタ構成なので現場のスキルを問わずスムーズに運用できます。生産計画や受注の進捗状況をリアルタイムに可視化することで、適正在庫や製品品質を維持しながら、特急オーダーへの対応や納期遅延の防止も可能に。納期変更にも柔軟に対応できる体制を確立できます。
また、業態の異なる複数部門を横断的に統合管理することで、組織の分断化を抑制。サポート体制が充実している点や、豊富なオプションの中から必要に応じて機能拡充を図れる点も、ProAxisの特長です。
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システムを活用し、円滑にロット管理をしよう
システムを活用した円滑なロット管理は、生産性向上や業務効率化につながるでしょう。そのためには費用対効果の高いシステムを導入することが大切。自社の現状を把握し、課題解決に貢献してくれるシステムを選ぶことが、企業力強化の第一歩です。