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2005年9月21日
個人の初期体力に基づいた個別運動処方である
「信州モデル(インターバル速歩)」の効果を実証
〜 〜 松本市参加者約510名の成果 〜 〜
信州大学の研究成果に基づき、松本市とNPO法人熟年体育大学リサーチセンターが共同で進めてきました「いきいき健康ひろば事業」について、半年間の成果をまとめました。
同事業参加者約510名を対象として、個人の初期体力に基づいた個別運動処方(インターバル速歩)を半年間実施し、その間の運動量と介護予防関連指標(筋力、持久力)、生活習慣病関連指標(血圧、血液検査など)、うつ指標(CES-D)とを比較検討しました。その結果、インターバル速歩は、ほぼ全ての指標において効果的であることがわかりました。
速歩による効果を、このような大規模データで実証した研究は世界初です。さらに、最近、介護予防効果が期待されているマシントレーニングは、約12.5%の悪化が指摘されています(昨年度の厚労省モデル事業)が、速歩による悪化(痛み増加)は5%以下でした。
このように、簡便性に加えて、効果と安全性が大規模エビデンスで実証されたため、信州大学で開発された個別運動処方(インターバル速歩)は、今後、介護予防、生活習慣病予防、うつ予防に、広く普及することが期待できます。
なお、本事業の一部は、経済産業省平成17年度「サービス産業創出支援事業」及び「電源地域活性化先導モデル事業」の委託を受け、熟年体育大学リサーチコンソーシアム(信州大学、松本市、NPO法人熟年体育大学リサーチセンター、キッセイコムテック株式会社、三洋電機株式会社)が進めています。
【本件に関するお問い合わせ先】

・信州大学大学院 医学研究科 加齢適応医科学系独立専攻(担当:教授 能勢 博)
  〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1 TEL:0263-37-2681

・松本市 健康福祉部 福祉計画課(担当:課長 熊谷 賢一)
  〒390-8620 長野県松本市丸の内3-7 TEL:0263-34-3227

・NPO法人熟年体育大学リサーチセンター 事務局(担当:事務局長 平林 宏美)
  〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1 TEL:0263-37-2697

・キッセイコムテック株式会社 ソフトメディア技術研究所(担当:所長 花岡 正明)
  〒390-1293 長野県松本市和田4010-10 TEL:0263-40-1122

・三洋電機株式会社 研究開発本部 ヒューマンエコロジー研究所 ホームアメニティ研究部(担当:専任課長 源野 広和)
  〒573-8534 大阪府枚方市走谷1-18-13 TEL:072-841-1286
1.事業の概要
「いきいき健康ひろば事業」は、本年4月から松本市の24地域で進めてきました。本事業は、図1に示すように、基本的には体力増進サービスであり、初期体力測定(健康診断含む)と日々の運動量に基づく運動指導が主体です。また、必要に応じて、体重・血圧などの計測値、食事記録、メンタル状態などに基づく総合健康指導も実施しています。これらの指導は、約2週間に1回、各地区のサービス拠点(福祉ひろば)で専門スタッフが行います。また、月1回程度の文化的カリキュラムも実施し、精神的な健康増進やモチベーション維持、地域コミュニティの形成も進めています。提携医療機関や提携介護保険事業者が実施する診療やケアプラン作成サービスも、広い意味では本事業の提供サービスに含めることができます。
サービスのしくみ
図1 サービスのしくみ
2.個別運動処方(インターバル速歩)
本事業の特徴は、個人の初期体力に基づいた個別運動処方であり、その運動方法を「インターバル速歩」(図2)と呼んでいます。
会員は、まず、開講時(4月と10月)に初期体力測定を受け、個人の体力(筋力、持久力)、血圧、血液検査値などを計測されます。そしてスタッフにより、その個人にとって最適な運動強度(速歩運動時の目標消費カロリー)が決定され、個人に貸与される「熟大メイト」に登録されます。会員は、その運動強度を目標にしながら、熟大メイトを用いて日々のトレーニングを行います。会員がトレーニング時に行った運動量は、熟大メイトに蓄積され、2週間に1回の運動指導時に参照されます。
これまでの研究の結果、3分程度の速歩(目標消費カロリーを超える速さの歩行)と3分程度のゆっくり歩行を繰り返せば、速歩をより長時間実施できることが明らかになっています。したがって、この反復運動方法を「インターバル速歩」と呼び、会員各位へ指導しています。
インターバル速歩の方法
図2 インターバル速歩の方法
表1に、5月1日〜9月10日までに各会員が実施したトレーニング量(平均値)を示します。参加者の平均値でみると、この期間の総日数(133日)のうち約半分(67.3日)でインターバル速歩が実施されており、しかも、全体の歩行の約50%が速歩になっていることがわかります。従いまして、参加者の多くが、精力的に、かつ、適切に、インターバル速歩によるトレーニングを実施したといえます。
表1 インターバル速歩によるトレーニング量
インターバル速歩によるトレーニング量
3.事業の効果(メリット)
(1)生活習慣病関連指標
生活習慣病関連指標は、本年4月に関連学会が公表したメタボリックシンドロームの診断基準によれば、血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、空腹時血糖などがあります。これらの指標に加え、体重、体脂肪率などのデータを解析しました。(図3)
体重は、初期(4月)と5ヵ月後(9月)の平均値を比較すると、男性1.4kg、女性1.4kg低下しました。また、体脂肪率は、男性2.8%、女性2.6%低下しました。血圧は、最高血圧9.6mmHg、最低血圧7.1mmHgの低下でした。空腹時血糖は、男性7.39mg/dl、女性4.55mg/dl、全体5.50mg/dlの低下でした。その他、解析したほぼ全ての生活習慣病関連指標が、改善されていました。

図3 生活習慣病関連指標の変化
生活習慣病関連指標の変化
(2)介護予防関連指標
介護予防関連指標は、筋力(大腿部)と持久力(全身)を用いました。週4日以上インターバル速歩を行い、かつ、1日の平均速歩時間が25分以上の参加者88名を抽出し、解析しました。筋力は、熟大メイトを用いて推定した等速性筋力(大腿筋)、また、持久力は、熟大メイトを用いて推定した最大酸素摂取量を使用しました。(図4)
等速性筋力は、初期(4月)と5ヵ月後(9月)の平均値を比較すると、男性は有意差がありませんでしたが、女性9.0%、全体8.8%の増加がありました。最大酸素摂取量は、男性12.8%、女性20.6%、全体18.1%の増加がありました。したがって、介護予防関連指標も改善されたと判断しています。
介護予防関連指標の変化
図4 介護予防関連指標の変化
(3)うつ指標
うつ指標は、うつ自己評価尺度(CES-D)を用いました。CES-Dは、アンケートに答えると得点化され、15点以上はうつ症状が重いと判断され、11〜14点はうつ症状がやや重いと判断されます。初期(4月)と5ヵ月後(9月)の平均値を比較すると、特に15点以上の人々が顕著に改善されていました。(図5) したがって、本事業によるメンタル改善は可能と判断しています。
うつ指標
4.事業の効果(メリット)
体の各部位の痛みなどについて、本事業に参加する前後の変化をアンケート調査しました。足の痛みは、良くなった(49.9%)と変化なし(46.5%)が大半であり、悪くなった例は3.6%に留まっています。(図6) その他、腰、胸、肩・首の痛み、動悸の程度、頭のふらふら程度についても、悪化した例はいずれも5%以下でした。したがって、本事業による弊害の可能性は、期待される効果と比較して極めて低いと判断しています。
5.まとめ
今回、約510名のデータ解析を行った結果、生活習慣病関連指標(血圧、血液検査など)、介護予防関連指標(筋力、持久力)、うつ指標(CES-D)のほぼ全てにおいて、効果が実証できました。また、体の各部位の悪化は、各部位とも5%以下でした。
速歩は、簡便にだれもが実施できる運動方法であります。今回、速歩運動を定量的に計測し、計測結果に基づいて個別指導する本事業について、効果と安全性が大規模エビデンスによって実証されました。今後は、本事業が、生活習慣病予防、介護予防、うつ予防に、広く普及すると期待できます。
以上
 
 
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